エモーショナルマーケティングとは、人間の感情にダイレクトに働きかけることのできるマーケティング施策のことを言います。
私たちが持つ感情は、人間の本質を知る上で、おそらく最も強力な力のひとつだと言えます。
人に何かを感じさせることができれば、その人の関心を引くことができるのです。
その感情はもしかすると「驚き」かもしれませんし「感動」かもしれません。
感情にはさまざまな種類がありますが、基本的に成功したと言われるマーケティング施策のほとんどが人間の何かしらの感情を大きく突き動かしているのです。
現代の消費者の多くは、購入するブランドと個人的なつながりを築き、長期にわたって有意義な関係を築くことを望み、またそれを期待しています。
顧客と関係性を築くためにも、エモーショナルマーケティングは絶大な効果を発揮するはずです。
今記事ではエモーショナルマーケティングをうまく活用する方法から戦略まで、幅広くご紹介いたします。
目次
・エモーショナルマーケティングとは？
・なぜエモーショナルマーケティングは効果的なのか？
-オーディエンスがあなたを思い出すのに役立つ
-売上アップに貢献
-オーディエンスを刺激し、共有させる
-顧客ロイヤリティを高める
エモーショナルマーケティングを成功に導くためのベストプラクティスとヒント
- 意味のあるストーリーテリングを採用する
- オーディエンスを驚かせ、興味を持たせる
3.オーディエンスを知り、彼らにフォーカスする
- クリエイティブな要素に細心の注意を払う
5.常にリアルであること
- オーディエンスの熱意に全面的に応える
・エモーショナルマーケティングの優れた実践例
-コカ・コーラ
-キャドバリー
・まとめ
CONTENTS
エモーショナルマーケティングとは？
現代のマーケティング手法の多くは、少なくともある程度はオーディエンスの感情をかき立てることを目的としていますが、ターゲットとなるオーディエンスと感情的なつながりを持つことが、エモーショナルマーケティングの第一の目的です。
この結びつきを利用して、商品を購入する、メーリングリストに登録するなど、オーディエンスに何らかのアクションを起こさせることが目的なのです。
多くのエモーショナルマーケティングは、ある特定の感情を利用することに重点を置いています。
その感情は、喜び、興奮、期待、誇りなど、ポジティブなものであることもあります。
しかし、成功したキャンペーンの多くは、恐怖、怒り、羨望なども利用していることもあります。
ただし、恐怖訴求はあまり好まれないので極力避けるようにしましょう。
意思決定に影響を与えるほど強い感情であれば、その感情はブランドのエモーショナルマーケティング戦略の焦点になっていると考えてよいでしょう。
なぜエモーショナルマーケティングは効果的なのか？
人間の感情に働きかけることは、マーケティング施策として有効なだけではありません。
情報を提供するだけでは、人々の頭に残りにくいですが、感情に働きかけることができることで多くの情報は人々の記憶に長く残る傾向があります。
エモーショナルな広告が、通常の広告に比べて23%も売上が増加するのは、まさにこのためなのです。
-オーディエンスがあなたを思い出すのに役立つ
あなたの頭に残る最も鮮明な記憶は、あなたに何か強い感情を呼び起こした経験ではないでしょうか?
もしかするとそれは幸せな記憶かもしれませんし、恐怖や怒り、不安などのネガティブな感情かもしれません。
感情は記憶と強い結びつきがあり、感情に訴えかけるような出来事や体験、そして広告は、人々の心に長く残る傾向があります。
オーディエンスに何かを感じてもらうことで、あなたのことを思い出してもらえる可能性が高くなるのです。
-売上アップに貢献
調査によると、人間の感情を利用したエモーショナルな広告の効果は平均31％、従来の戦術にこだわった広告の効果は16％程度と言われています。
つまり、オーディエンスの感情に訴えかけることは、購買意欲を高めるのに効果的な方法なのです。
エモーショナルマーケティングは、その人が顧客になったら何ができるかを示すものでもあります。
あなたの提供する製品やサービスによって、顧客はもっと幸せを感じることができると感じるかもしれないし、もっと健康になれる、もっと自信が持てるなどといった、さまざまな可能性があることを納得させることができるのです。
-オーディエンスを刺激し、共有させる
もし、あなたがあなたの感情を強く動かす何かを見たり、体験したりしたときに、あなたは通常どのような行動をとりますか？
多くの人はその体験を家族や友人に話したり、ソーシャルメディアのフィードにその感動の原因をコンテンツとして共有したりして、おそらく他の人に伝えるのではないでしょうか。
人々は、自分のソーシャルメディアのタイムラインを、何かを感じさせてくれるもので埋め尽くすのが大好きです。
ポジティブな感情は他の人に伝え、ネガティブな感情も聞いてもらい、共感してもらいたいのです。
また、感情を揺さぶるようなコンテンツは、オーディエンスによる継続的な会話も呼び起こしやすいのです。
-顧客ロイヤリティを高める
ブランドと感情的なつながりを持った顧客は、そうでない顧客よりもはるかに価値があります。
あなたの会社とつながりを感じている人は、長期にわたってあなたに忠実であり続け、何度も商品を買いに来てくれるでしょう。
また、ロイヤリティの高い顧客は、あなたのサービスを他の大切な人に薦める可能性も高くなります。
彼らはあなたの代わりにあなたの伝えたいメッセージを他者に伝播し、
あなたが提供する製品の良さを紹介するでしょう。
これは、人々の感情に強く働きかけることでしか、生み出せることのできない広告の種類なのです。
エモーショナルマーケティングを成功に導くためのベストプラクティスとヒント
エモーショナルマーケティングがなぜ有効なのか、そしてそれがあなたのビジネスに何をもたらすのかを理解することは、エモーショナルマーケティングで成功を収めるためのほんの始まりにすぎません。
ここでは、キャンペーンを成功させるためのヒントやコツ、ベストプラクティスを紹介いたします。
- 意味のあるストーリーテリングを採用する
人の心は「良い物語」が大好きです。
ストーリーは、人々の感情を揺さぶり、親近感を与え、つながりを促す美しい方法です。
総合的なエモーショナルマーケティングキャンペーンの基礎となるものでもあります。
また、ストーリーは、ありそうでなかった製品やサービスにも感情を結びつけることができる、シンプルで親しみやすい方法です。
広告やウェブコンテンツに生き生きとしたストーリーを加えることで、このようなことが可能になりますが、ストーリーテリングを活用する方法はそれだけではありません。
広告に顧客の声を使ったり、ウェブサイトの「会社情報」ページに会社の裏話を加えたりすることもできます。
チャリティ関連のマーケティングキャンペーンも、あなたの会社やブランドに人間らしさを与えるのに役立ちます。
- オーディエンスを驚かせ、興味を持たせる
あなたは、ある体験があなたの意表を突くものであった場合、その体験を正確に記憶する可能性が高いことをご存知でしょうか。
そうです、「予想外」の体験です。
顧客に対するアプローチも同じで、この「予想外」を利用することができます。
フレッシュなアイデアを企画したり、顧客がこれまで考えもしなかったような角度から既存のアイデアにアプローチしてみましょう。
知っているつもりになっていたことを、少し質問させるくらいがちょうどいいのです。
そうすれば、あなたのブランドやメッセージの核心について、より多くの情報を自ら探そうとする可能性が高くなり、今後、あなたにより大きな関心を寄せてくれることでしょう。
3.オーディエンスを知り、彼らにフォーカスする
リーチするためには、「多ければ多いほどよい」と単純に考えてはいけません。
マーケティングを成功させるためには、持続的な成長を実現し、それを育むことが重要です。
そのためには顧客ロイヤルティが重要ですが、万人に万能であろうとしていては、その実現は不可能です。
できるだけ多くの人の心に刺さるように書かれたメッセージでは、全く心に響かないかもしれません。
ですので、自分の顧客が誰であるかを明確にし、彼らを念頭に置いてマーケティングメッセージを作成するようにしましょう。
- クリエイティブな要素に細心の注意を払う
マーケティングキャンペーンのクリエイティブな部分を開発する際には、記憶と感情は「感覚」と強く結びついていることを念頭に置いてください。
特に色彩は、人の感情に強く作用します。
例えば、赤は興奮や情熱、青は落ち着きやリラックス、安全などを本能的に連想する人が多いようです。
このようなことを意識して、感情に訴えかけるようなイメージを選ぶとよいでしょう。
音楽や音も同じです。
長調の曲は、陽気で楽観的、ハッピーな印象を与えます。一方、マイナーキーのメロディーは、憂鬱、内省、悲しみなど、より複雑な感情を呼び起こすものです。
テンポ、楽器、ハーモニーの選択も重要です。
5.常にリアルであること
広告を見ていると自覚していても、人は何かを強く売りつけられたり、財布に手を伸ばすように仕向けられたりするのを嫌がります。
それよりも、「リアル」「本物」だと思えるブランドや企業とつながりを持つことを求めています。
そして、あなたが本物であることを知ることでビジネスを任せたり、生活の質を任せたりすることができるのです。
ですから、 マーケティングは常に「リアル」でないと、人々の感情に訴えかけることができないのです。
また、消費者は企業に対してそこまで優しくはないので、偽りや上っ面だけのメッセージを見抜くことができます。
新規顧客だけでなく、既存顧客が抱くあなたへの信頼を失わないためにも、自社のコアバリューを知り、それが顧客のコアバリューと交差する部分を理解し、ブランディングに誠実に取り組むようにしましょう。
- オーディエンスの熱意に全面的に応える
昔ながらの実店舗を経営している場合、顧客と関わることは多かれ少なかれ必要なことです。
顧客が来店されたら、挨拶をして、歓迎の意を示すのは本能的なことです。
しかし、コンピュータの画面の向こう側にいる顧客は、そのようなことを忘れてしまいがちです。
エモーショナルマーケティングキャンペーンの効果を高める最も効果的な方法のひとつは、オーディエンスの熱意に全面的に応えることです。
顧客が投稿した、あなたの製品を使っている写真や気に入っている写真にコメントしたり、「いいね！」と言ったり、再共有することで、ロイヤリティを築きましょう。
また、コンテンツに対するコメントに返信し、人々が抱く疑問にも答えましょう。これは、あなたのブランドを中心としたコミュニティを構築し、育成するための素晴らしい方法です。
エモーショナルマーケティングの優れた実践例
エモーショナルマーケティングの基礎が分かってきたところで、実際のエモーショナルマーケティングの成功例とはどのようなものか、もっと詳しく見てみたいと思いませんか？
それぞれの例は異なりますが、いずれもターゲットとなる人々の感情を深く揺さぶる術を備えているエモーショナルマーケティングの事例をご紹介いたします。
-コカ・コーラ
パンデミックが始まって以来、多くのブランドが人々を元気づけ、顧客をサポートしている、配慮していることを感じさせるような広告を制作してきました。
人とのつながりやポジティブな思い出作りに重点を置き、さまざまなクリエイティブを作ってきたことで有名なコカ・コーラはいったいどのようなコミュニケーションを取ったのでしょうか?
コカ・コーラは、心のこもったメッセージ入りのコーラ缶をカスタムオーダーし、大切な人に贈ることを可能にしたのでした。（この限定缶は店頭でも販売されました）
そのメッセージは、コカ・コーラの象徴的なロゴの代わりに表示され、コーラの顧客が、ブランド自身のアイデンティティよりも、健康や有意義な感情的つながりを重要視していることを示していました。
-キャドバリー
画像引用:https://www.cadbury.co.uk/products/cadbury-dairy-milk-11327
キャドバリーは、コカ・コーラと同じように、イースターを盛り上げるために、バーチャル・エッグハントを実施し、遠く離れた大切な人たちが、パンデミックが続いているにもかかわらず、より親密感を感じられるようにしました。
参加者は、グーグルマップに対応したARアプリを使って、世界のどこにでもバーチャルの卵を無料で隠すことができました。
また、希望者は4種類の限定エッグを購入し、アプリを使って大切な人のためにエッグを「隠す」ことができます。そして、見つかったら、その卵の実物を受け取ることができたのでした。
このキャンペーンは、パンデミックに疲れた顧客に、大切な人とのつながりを感じてもらうと同時に、ちょっとした遊び心で、キャドバリーブランドと個人的なつながりを育むことが狙いでした。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はエモーショナルマーケティングについてご紹介いたしました。
通常のマーケティングでも顧客のインサイトや感情は、マーケティング施策の方向性を決める上で重要なポイントですが、エモーショナルマーケティングではその部分が最大限に生かされます。
また、消費者の感情に触れ、記憶してもらうことは彼らと信頼関係を築いていく上では欠かせないことなのです。
私たち人間は、自分たちが数えきれないほどの感情を持つのと同じで、エモーショナルマーケティングにもさまざまな表現方法があるはずです。
ぜひ、今回ご紹介したポイントを活用してあなたにしかできないエモーショナルマーケティングを実施してくださいね。
著者紹介
鈴木伸二
代表取締役CEO
1985年生まれ。岩手県出身。
SEO/Web広告運用/サイト分析・改善など、Webサイトの運用改善を得意としています。
