AI(人工知能)と聞くと、少し未来感を感じていたかもしれません。
しかし、もうAIは私たちの生活の中に溶け込み、気づかないうちに使用されているようになっているレベルなのです。
デジタルマーケティングで欠かせない存在であるインフルエンサーも生身の人間ではなく、AIが担う時代になってきているのです。
AIインフルエンサーは現実には存在しませんが、ソーシャルメディア上でファンを獲得し、そのユニークさから多くのオーディエンスから注目を集めています。
なぜ、彼らはそこまで人気なのでしょうか?
その理由は「存在しない」人物に憧れる人々の興味や期待が存在するだけではないかもしれません。
デジタルの世界で活躍するインフルエンサーマーケットの拡大でさえ、多くのマーケターが予想していなかったことなのです。
そうなると、AIインフルエンサーなどのテクノロジーとインフルエンサーカルチャーのコラボは誰も予想ができなかったでしょう。
しかし、AIインフルエンサーは今後デジタルマーケティングの世界で重要な役割を担うようになってくるでしょう。
今記事ではそんなAIインフルエンサーが一体何者なのかについてといった基本的な部分から、デジタルマーケティング戦略においてどのようにAIインフルエンサーを活用すれば良いかを詳しくご紹介していきます。
目次
・AIインフルエンサーとは?
・他のインフルエンサーとどう違うのか?
-AIインフルエンサーは完璧である傾向がある
-AIインフルエンサーは1からパーソナリティーを制作できる
-バーチャルインフルエンサーは一人で存在するのではない
・なぜAIインフルエンサーが注目されるのか?
・なぜブランドはデジタルマーケティング戦略でAIインフルエンサーを起用すべきなのか?
- エンゲージメントの向上
- ナラティブの自由度
- ストーリーテリングの力
- テクノロジーやイノベーションとの連携
- 新しい世代とのつながり
・AIインフルエンサーの例
-Miquela(ミケーラ)
-Noonoouri(ヌノウリ)
-Knox Frost(ノックス・フロスト)
-Imma(イマ)
・まとめ
CONTENTS
AIインフルエンサーとは?
AIインフルエンサーとは、ブランドやメディアエージェンシーが制作、管理を担当している、コンピューターグラフィックス技術と機械学習アルゴリズムを用いて作成されたバーチャルなパーソナリティのことです。
ソーシャルメディアやブログなどのオンラインチャネルを通じて自分の意見や好きな商品を紹介するなどしたコンテンツを通して、影響力を獲得しているデジタルインフルエンサーは多くの人がご存知ですよね。
彼らとAIインフルエンサーとの違いは生身の人間か、テクノロジーで操られているか、と言うことです。
AIインフルエンサーは生身の人間であるインフルエンサーをコンピューターで仮想化したものなのです。
実際のユーザーと同様に、AIインフルエンサーは数百万人のフォロワーを持ち、忠実で熱心な視聴者を持ち、ファンの行動やライフスタイルに影響を与える力を持っています。
そのため、たとえ現実世界には存在しなくても、パワフルで影響力のある人物とコラボしたいと考えるブランドからも注目されているのです。
AIインフルエンサーは、CGI(コンピュータ・ジェネレーテッド・イメージ)で作られたバーチャルインフルエンサーを進化させたものと考えることができます。
そのため、CGIインフルエンサーとも呼ばれています。
一方、AIインフルエンサーは、人工知能や機械学習をベースにした技術のレイヤーを持っているので、キャラクターとしてそのパーソナリティーは複雑に構成されているのです。
このように、これらのパーソナリティーはソーシャルメディア用の写真に登場したり、動画の中で動き回ったりするだけでなく、あたかも実在の人物のようにユーザーとバーチャルで交流することができるのです。
これらのロボットは、テキスト形式やバーチャルリアリティでユーザーと対話するうちに、人間の言葉や行動を学習し、次第に本物の人間に近い存在になってゆくのです。
他のインフルエンサーとどう違うのか?
-AIインフルエンサーは完璧である傾向がある
AIインフルエンサーの大きな特徴として上げられるのが、驚くべきほど完璧だということです。
本物のインフルエンサーは「私たちのような人間」です。
美しさやライフスタイルの理想のイメージをSNSで発信し、昨今では批判も多いのですが、彼らは人間であるが故に心を持ち、批判などには傷つきやすい存在です。
一方でAIインフルエンサーは人間のように見えたり、人間のような振る舞いをしたとしても心を持っていません。
これらのAIインフルエンサーの外見や性格は、特定の目的を達成するために綿密に設計されています。
その為、彼らがどこかのブランドとコラボしたとしても、何か間違いを犯してしまったり、変な顔の写真を上げてしまうことはあり得ないのです。
人々はこの「完璧さ」に興味を示す反面、10代の若い子供たちが彼らを理想としてしまい、達成することのできない完璧さを追い求めてしまうのではないかと議論を呼び起こしているのです。
このことは、デジタルインフルエンサーの世界ではすでに議論されていますが、AIインフルエンサーではさらに複雑になっています。
人間であるインフルエンサーもインスタグラムに投稿する写真を加工していたりすることで、「フェイクだ」と批判されることが多くありますよね。
しかし、このAIインフルエンサーの場合は完璧を求める編集さえも、彼らの自由な創作の一部なのです。
そしてオーディエンスはそれを理解する必要があるのです。
-AIインフルエンサーは1からパーソナリティーを制作できる
AIインフルエンサーは人間の手で作られたバーチャルなインフルエンサーです。なので、彼らなりの特徴やストーリーをAIインフルエンサーに持たせることができるのです。
また、本物のインフルエンサーの制約に頼ることなく、ブランドに合わせた戦略やアクションを設計することも可能です。
例えば、マスコットをAIインフルエンサーにするなど、人間の容姿ではないインフルエンサーを作ることも可能です。
ブランドにとって、これは貴重かつ重要なことであり、アクションの可能性を大きく広げるものなのです。
また、いくら自由に設計できるといっても、少しは人間味を持たせる方が良いとされているということもあるのです。
そうでないと、彼らを支持するオーディエンスが突拍子もない行動や発言に奇異に感じ、そのキャラクターに違和感を抱き始めると、彼らを信じなくなる可能性があるからです。
-バーチャルインフルエンサーは一人で存在するのではない
彼らの背後には、通常、彼らの「キャリア」を管理するメディア企業というチームが存在します。
そのため、すべての行動は会社との交渉を経て、ガイドラインや彼らのできるお仕事なども定義されています。
なぜAIインフルエンサーが注目されるのか?
多くの人はAIインフルエンサーという言葉を聞いても、まだピンとこず、少し遠い存在に思えるかもしれません。
存在もしないキャラクターがソーシャルメディアを通して、人々の生活に大きな影響を与えるなんて、いったいどんな狂気的な社会なのだろうとさえ思うかもしれません。
しかし、私たちは自分の身体や行動を通して世界や社会と交流しているため、実在しないものとも社会的に交流できているのです。
AIインフルエンサーの場合は、人間に非常に近いロボットということです。
場合によっては、見た目は人間と変わらないかもしれませんが、私たちと同じように自己表現をすることができます。
物理的にはこの世界に存在しないかもしれませんが、フォロワーの人生において確実に意味を持つ存在なのです。
また、人工知能を持つインフルエンサーの力を、私たちが生きるデジタル時代の文脈で理解することも必要です。
現代では、生活が本質的にデジタル化する、あるいはすでにデジタル化しつつあります。
それを考慮すると、人々が自然にバーチャルなキャラクターに感情移入する理由も理解しやすくなるのではないでしょうか。
また、ブランドがこうしたインフルエンサーに注目するのも、AIインフルエンサーが新しい形で人々とつながり、コミュニケーションをとる力を持っているからだと理解できます。
なぜブランドはデジタルマーケティングでAIインフルエンサーを活用すべきなのか?
マーケティングは社会の変化に対応し、常にトレンドを見極めなければなりません。
そして今、多くのマーケターやクリエイティブは先日Facebookのマークザッカーバーグ氏が発表した、メタバースに注目しています。
メタバースのようなバーチャルな世界に人気が集まるということは、ブランドはAIインフルエンサーの力を理解し、どのように戦略に取り入れることができるかを考え始めるべきなのです。
人間のデジタルインフルエンサーと同様に、AIインフルエンサーもまた、オーディエンスから多大なる信頼と賞賛を得ています。
彼らはオーディエンスのライフスタイルや行動に影響を与え、その価値観がブランドのイメージと結びついています。
これが、近年インフルエンサーマーケティングが大きな意味を持つようになった理由です。
今度はAIインフルエンサーをデジタルマーケティング戦略に起用する価値がある理由を紹介します。
- エンゲージメントの向上
インフルエンサーと提携する場合、ブランドにとって最大の目標の1つは、ソーシャルメディア上でのエンゲージメントを高めることです。
そして、バーチャルインフルエンサーについて言えば、人間のインフルエンサーよりもエンゲージメントを高めることができるのです。
下のグラフでは、バーチャルインフルエンサー(オレンジ色)と人間のインフルエンサー(緑色)のエンゲージメントの割合を比較することができます。
画像引用:https://hypeauditor.com/blog/the-top-instagram-virtual-influencers-in-2020/
このグラフが示すことは、多くの人々がバーチャルなインフルエンサーに興味を示していると言うことです。
また、AIインフルエンサーはAI機能がベースでインタラクションを生み出しているので、より多くのエンゲージメントを得るためにどのようにオーディエンスに答えるべきかを正確に知っているのです。
- ナラティブの自由度
ブランドがAIインフルエンサーと交渉するとき、彼らは生身の人間の人格を相手にしているわけではありません。
実際には、ブランドのために完全にカスタマイズされた物語を作成することができる「メディアチーム」と交渉しているのです。
インフルエンサーのパーソナリティと一致する行動であれば、すべてがパートナーブランドの思い通りになります。
したがって、ブランドはシナリオをより自由にコントロールでき、戦略上理想的なキャラクターを創造することができるのです。
一方で人間のインフルエンサーを起用した場合は、彼らの意見やパーソナリティーを充分に考慮しないとコラボレーションなども実現することができません。
この点においても、AIインフルエンサーはブランドの夢を叶えてくれる存在でもあるのです。
- ストーリーテリングの力
キャラクターやストーリーをゼロから、自由なクリエイティブの力で作り上げることができれば、より刺激的なストーリーをオーディエンスに伝えることが可能になります。
AIインフルエンサーはブランドの目的を達成するために、ストーリーテリングの最も魅力的な要素を結集させたオーダーメイドのインフルエンサーなのです。
創造性とファンタジーをもって、ブランドが望む架空の世界を創り出すことができます。
インフルエンサーの生い立ち、日常生活で行っている活動、直面している課題、良い感情や悪い感情など、これらすべてがバーチャルインフルエンサーによるクリエーションの一部となります。
- テクノロジーやイノベーションとの連携
ブランドオリジナルのAIインフルエンサーを作ったり、AIインフルエンサーと提携したりすることは、ブランドがトレンドに沿ってコンテンツを展開していると言うことを示せる方法でもあります。
このような技術とブランドをコラボレーションさせることは、テクノロジーとイノベーションをブランドイメージに関連付けることができます。
これらの価値観をブランドと関連付けることがブランドにとって驚きを生み出せることならば、AIインフルエンサーとパートナーシップを結ぶ価値があります。
例えば、このサムスンのギャラクシーの広告は、世界で最も有名なバーチャルインフルエンサーの一人であるMiquelaとパートナーシップを組んでいます。
動画リンク: https://youtu.be/X24XhJ1zwH8
- 新しい世代とのつながり
ミレニアル世代とGenZ世代は、インターネットやテクノロジーの新機能にいつでも大きな関心を示しています。
これらの新しい世代は、より自然に、より感情的にテクノロジーと付き合う習慣があるため、このように今まで自分たちが当たり前のように使用していたソーシャルメディアと言うプラットフォームに新しいテクノロジーが加わることで興奮を感じるでしょう。
このように、ブランドはこれらの新しい層の消費者にアプローチするために、これらのパーソナリティとのパートナーシップを活用することができます。
AIインフルエンサーの例
AIインフルエンサーの事例
人工知能を持つインフルエンサーがどのようにソーシャルメディアで活躍しているのか、実際に見てみたいですか?
ここでは、有名なAIインフルエンサーをご紹介いたします。
また、彼らはAIインフルエンサーではありますが全てのAIインフルエンサーがオーディエンスと対話できるわけではありません。
今のところ、彼らはCGIのインフルエンサーで、投稿やユーザーとのやりとりを行うチームが彼らの運営者として存在しています。
-Miquela(ミケーラ)
画像引用:https://www.entrepreneur.com/article/352937
Miquelaは、AIインフルエンサーの中でも一番人気のあるインフルエンサーのひとりです。
彼女はまだバーシャルな世界やAI技術がそこまで発展していなかった2016年に、バーチャルキャラクターとして誕生しました。
しかし、彼女が登場した当初、多くの人が彼女のことを実在する人物だと認識していたのでした。
しかし、彼女が(彼女を制作した運営チームが)自分自身のことをAIロボットであると好評した日を境に多くのブランドが彼女とのコラボレーションを頼み始めたのでした。
それ以降はカルバンクラインやプラダといったハイファッションのブランドとコラボを続け、「Black Life’s Matter」などの大きな社会的運動にも立ち向かったのでした。
-Noonoouri(ヌノウリ)
画像引用:https://en.vogue.me/fashion/cgi-influencers-noonoouri/
Noonoouriは、自由で持続可能なファッションを提唱するインフルエンサーでありバーチャルモデルでもあります。
加えて、ソーシャルメディア上ではヴィーガンの活動家としても位置づけられています。
彼女のルックスは、他のインフルエンサーとは少し違います。大げさなくらい大きな目をしているため、リアルな人間とは思えないキャラクターなのです。
その見た目から明らかに人間ではなく、グラフィックで作られたものだと一目で分かるはずです。
-Knox Frost(ノックス・フロスト)
画像引用: https://news.iccopr.com/virtual-influencers-hasta-la-vista-humans/
AIインフルエンサーは女性キャラクターだけでなく、男性キャラクターも存在します。
ノックスは同年代の男性と同じように、世の中に溶け込みたい、自分のスタイルを持ちたいと考えている、私たちが暮らす現実世界によく居る男の子のようなパーソナリティーを持っています。
コロナウイルスが大流行した際には、世界保健機関がこのインフルエンサーの協力のもと、コロナウイルスのケアと若者のメンタルヘルスに対する意識を高める活動を行いました。
-Imma(イマ)
画像引用:https://www.gqjapan.jp/culture/article/20210721-diesel-imma-ten
イマは、日本初のバーチャルインフルエンサーです。
彼女は2018年7月に初めて登場し、それ以来、日本だけでなく世界で人気を獲得しています。
現在、彼女のInstagramのフォロワー数は30万人をはるかに超えています。
イマは日本の文化、映画、芸術に興味があり、アディダス、バーバリー、TikTok、イケアジャパンなどのブランドとコラボしてきました。
数なる成功から、彼女は日本経済新聞社が主催する「注目の新タレント100人」に選ばれています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はバーチャル世界を盛り上げるAIインフルエンサーたちについてご紹介いたしました。
デジタルが主流になっている現代社会でAIインフルエンサーはどんどん、人気を得ることでしょう。また、彼ら自身の活動だけでなく、他の大手ブランドが彼らとどのようにコラボレーションしてキャンペーンを展開するかにも目が離せません。