AR技術(拡張現実)は、もはや単なる新しい技術ではなく強力なマーケティングツールのひとつとなりつつあります。
ARをマーケティング戦略に取り入れることで、顧客に満足だけでなく、感動や驚きを提供し、その結果として売上を促進し、エンゲージメントを高めることに繋がるのです。
今記事ではARを活用することでマーケティング戦略にどのような変化を生み出すことができるのかに焦点を絞り、事例を交えさまざまなベネフィットをご紹介いたします。
AR技術の今
エコノミスト誌が発表したデータによると、AR技術に対する国内総生産(GDP)支出の割合は、世界各国で大幅に増加しており、
アメリカでは国内総生産(GDP)の約3%がこの新興技術に充てられると予測されています。
ここ数年、ARは消費者の製品との関わり方に影響を与え始めています。2019年、Gartner社は、
“2020年までに、1億人の消費者がオンラインや店舗でARを使って買い物をする “と大胆に主張しました。
COVID-19の影響でパンデミックが到来し、この予測は崩れましたが、消費者の75%は小売業者がAR体験を提供してくれることを期待しているのです。
また、ARは比較的新しい技術ですが、すでに消費者のショッピング体験に欠かせないものになりつつあります。
Tesco、Converse(コンバース)、IKEA、ZARA、Lacoste(ラコステ)などのブランドは、ARソリューションを活用して、
商品にインタラクティブなコンテンツを埋め込み、没入感のある体験を作り出しています。
例えば、旅先で訪れた新しい都市の空港に到着し、観光地の広告のQRコードをスキャンすると、その都市の観光地がデジタル内で歩きながら体験できることを想像してみてください。
他にも、子供がランチタイムのスナック菓子のパッケージをスキャンするだけで、ミニゲームで遊べたり…。
ARコンテンツを作成することで、ブランドや小売業者は、消費者の行動をより深く理解しながら、斬新な方法でビジネスを展開することができます。
消費者がどのように自社製品に関わっているのか、どのようなマーケティングキャンペーンが効果的なのかを理解することができます。
また、ARは消費者にエキサイティングな方法でエンゲージメントを提供することを可能にするのです。
企業におけるAR活用の現状と課題
ARの初期の活用例としては、Snapchatの取り組みが挙げられます。
ユーザーがフィルターで犬の耳やピエロのメイクなど、自分の顔で遊べる機能は極めて画期的なものとして人気を博しました。
このようなARへのアプローチは、スターバックスやギネスなどの多くの企業が、クリエイティブな方法でブランドを宣伝する方法として活用しています。
マーケットレスなARは制約が少ない反面その技術の実現が難しく、開発までに多くの時間を要します。
しかし、そんな複雑なAR技術を活用し、たゲームが2016年に世界を席巻したのです。そのアプリが「Pokemon Go」でした。
Niantic社が任天堂と提携して開発したアプリ「Pokemon Go」は、幅広い年齢層のユーザーがアプリをダウンロードして家を飛び出し、
現実の環境でポケモンを探すという、世界的なムーブメントを起こしたのでした。
そして驚くべきことに、「Pokemon Go」はわずか19日で全世界で5,000万ダウンロードを達成しました。
これは、新しいAR技術を利用したモバイルゲームとしては考えられない結果でした。
企業がデジタルマーケティング戦略にARを取り入れることは、表面的でギミックに満ちていると思われるかもしれませんが、
この技術の実際のメリットに目を向ける価値があります。ギミックや目新しさと、本物の「ワオ」の要素との境界線は、時に曖昧になってしまいます。
そのため、ARはブランド認知に大きな効果を生み出すのです。
AR技術が効果的に活用されれば、それらを活用したキャンペーンは簡単に会話の主役になり、人々の間でブランド認知度が急上昇するでしょう。
ブランドの認知度が高まれば、アプリのダウンロードやソーシャルでのエンゲージメントが増え、インタラクティブな要素がユーザーの満足度を高めることにもつながります。
また、インタラクティブな要素は常にユーザーの満足度を高めることにもつながります。
従来の紙媒体やオンライン広告では、顧客に次の行動を促すような形でコンテンツを提示していましたが、
AR技術を使うこで簡単に顧客を巻き込み、コンバージョンへと導くような没入感のある体験を作り出すことができるのです。
消費者の要望とニーズを満たす
マーケティングやゲームにおけるAR技術(拡張現実)の導入は、明らかに消費者の共感を得ています。
この技術はまだ始まったばかりであるにもかかわらず、ARのインパクトとその没入感により、
企業によってはこのようなソリューションの導入が収益性の高い、必要不可欠な行為となっています。
Smart Insights社の調査によると、61%もの買い物客が、AR技術(拡張現実)を提供している小売店を、
まだ採用していない小売店よりも好むようになっているということが判明しました。
ARの使用例を見ると、現実の風景の中にある製品のデジタルレンダリングが購買決定に重要な役割を果たしていることがわかります。
そして今、消費者は購入を決定する前に、他の製品についても同じレベルの安心感と洞察力を得たいと考えているのです。
興味深いことに、68%の消費者はARによる洞察が得られると、製品をより長く使う傾向があるのです。
つまり、購入の意思決定は、ARによってもたらされ、製品やその特徴をデジタルでより多くの時間をかけて知ることで、購入の可能性がより高くなるのです。
おそらく最も重要なことは、買い物客の72%が、拡張現実の影響で思いがけない買い物をしたことがあるということです。
この統計は、ARが製品を補完するだけでなく、積極的に購買意欲を高める原動力になることを示しています。
マーケティング担当者がARがもたらす可能性を理解する中で、
消費者がこの技術の先行例であるPokemon Goや以前の小売店でのアプリケーションに十分な時間をかけて接してきたことは明らかであり、
ARの没入感のある品質とそのアプリケーションに魅了される準備ができている市場が確実に存在することを示しています。
AR技術を活用したショッピングの未来
AR技術は、オンラインショッピングの方法をさらに進化させる上で重要な役割を果たしています。
例えば、IKEAとHome Centreは、ユーザーがバーチャルに家具を自宅に置いて実際に部屋に家具を置くとどのような雰囲気になるのかを確認することのできるアプリを開発しました。
これらのアプリは、前述の「ワオ」の要素を生み出すだけでなく、実用性にも富んでいます。
その他にも、Android端末で既に提供されている「Google Lens」というアプリでは、顧客がカメラでQRコードやアイテムをスキャンすることができます。
またGoogle Lensの「Style Match」機能は、ユーザーが実店舗で見ている商品をオンラインで探すのに役立ち、オフラインとオンラインの小売店をつなぐ貴重な存在となっています。
また、広告もAR技術の影響を大きく受けはじめています。
その一例として、「Stranger Things」では、革新的な方法でファンにアプローチしています。
ユーザーは、スマートフォンのGoogle Lensアプリで新聞の広告をスキャンすると、番組内で人気の場所であるスターコート・モールを実際に体験することができるなどして、
視聴者をドラマの世界観へ誘うキャンペーンを行ったのでした。
また、これまでテクノロジーの影響をほとんど受けなかった昔ながらの買い物の習慣が、今後どのように変化していくかにも注目したいところです。
近い将来、ARの助けを借りて、食料品などの買い物が一変するかもしれません。
買い物をしていると、お買い得品や割引品、セール品などの画像がデバイスに表示されるようになることで、わざわざ他のお店に足を運ぶことなく、
安くお求めの商品を買えるようになるでしょう。
AR技術は、従来の広告手法をシームレスに取り入れ、ユーザーがインターネットを閲覧しているかどうかにかかわらず、
より高いレベルのエンゲージメントを実現する没入型の体験に変えることができます。
これこそ、広告の未来であることは間違いないでしょう。
AR技術はソーシャルメディアマーケティングをどう変える?
ソーシャルメディアにおけるARの活用は、多くのブランドが自社のウェブサイトやアプリへの導入を検討している段階ですが、
近い将来、FacebookやInstagramのようなソーシャルネットワークでも、さまざまなブランドに関連した完全に発達したAR機能を提供できるようになるでしょう。
ソーシャルメディアプラットフォームとAR技術を統合する最大のメリットは、お客様がより便利に商品に接することができるようになり、
その結果として返品の数を減らすことに繋がるのです。
大量の返品は企業にとって大きな損失となりますが、ソーシャルメディアを活用したバーチャル試着は、
日常的に利用者の多いプラットフォームで商品をより身近なものにすることができます。
お客様は商品が自分に合っているかどうかを知ることができ、ブランド側は返品を抑制しながら商品への関心を高めることができ、
SNS側はユーザーがウィンドウショッピングやバーチャル試着を楽しむことで、訪問者数を増やすことができるという、お互いにメリットのある仕組みなのです。
まとめ
没入感のある物理的な広告を作成したり、製品のバーチャル試着セッションを統合したりと、マーケティングにおけるARの可能性はほとんど無限大です。
しかし、すでにARを活用した数多くのキャンペーンから、この技術に関してどのようなトレンドが生まれているかを判断し、
ARをマーケティングに採用する際の注意点を頭に入れておくことも大切です。
ARマーケティングキャンペーンの良いポイント
ARマーケティングを採用する企業にとって、優れたARキャンペーンの影響力は以下のような可能性を秘めています。
・顧客にとって共有性の高いサービスの提供が可能になる。
・AR技術を駆使したシンプルで使いやすいサービスを提供し、顧客のエンゲージメントを高めることができる。
・実際に機能する付加価値のあるサービスを提供する。
過去にペプシは、ARが広告の世界で話題を作るために利用できることを示したバスシェルターのARスクリーンを使って、
YouTubeで最も人気のあるバイラル広告キャンペーンを展開しました。
このスクリーンは視聴者に、自分が住んでいる通りがエイリアンやモンスターに侵略されているように見せるもので、
その他にもクレイジーな出来事がARによってたくさん表現され、それらは視聴者を大いに楽しませたのでした。
しかし、AR技術はこのような優れたキャンペーンで活用されていることが多いため、
しっかりと精度をあげた上で消費者に公開するようにしないと、期待を悪い意味で裏切ってしまう形になりかねません。
その為にも今回ご紹介したAR技術のポイントをしっかりと抑え、見る人の「ワオ」を作るようなARキャンペーンに繋げてみてください!