マーケティングにおいて大切なこと、それはオーディエンスをしっかりと理解することです。
しかし、本当にメッセージを届けたいターゲットオーディエンスの核心をつくことはすごく難しいことでもあります。
“オーディエンスを理解することが重要”といっても、大規模なアンケートや調査から得られる大きなデータからは、
グラフィック単位でのリアクションしか確認することができません。
「一人ひとりの心が手にとるように理解できる能力があれば…」
そう思うマーケターは非常に多いことでしょう。
しかし、簡単な方法でターゲットオーディエンスの心や行動への理解を深められる方法が実は存在しているのです。
それは、心理学の基本を学ぶことです。
人間の感情や特定の事柄に対するリアクションにはもちろん、個人差がありますが、基本的に、心は同じ動きをしています。
心がワクワクする色合い、興味を掻き立てられる話の展開…
それらの型をまずは学んでから、自らのブランドや商品でしか表現できない方法を見つけることができれば、それはあなたのブランド”しかできない”アプローチ方法になるはずです。
だからこそ、心理学に基づいた戦略は、ターゲットの心に最も近づける手法なのです。
今記事ではソーシャルメディアにフォーカスした、心理学をもとに、あなた自身のソーシャルメディア戦略に活かせるような心理学的マーケティング戦略をご紹介いたします。
CONTENTS
人がソーシャルメディアのコンテンツをシェアする理由
あなたはなぜ、人々がソーシャルメディアでコンテンツをシェアするのか、考えたことはありますか?
私たちはなぜ、ソーシャルメディアを使って私たちの生活や、他の人の投稿したコンテンツなどをシェアするのでしょうか?
この疑問について、ニューヨーク・タイムズ紙が大規模な調査を行ったところ、人々がオンラインでコンテンツをシェアするのには大きく4つの理由があるということがわかりました。
自分の周りの人の生活をより豊かにするため
94%という、ほぼすべての人々が彼らがシェアするコンテンツが、何かしらの形で彼ら友人やソーシャルメディアで繋がっている人々の生活をより豊かにすると感じるからと回答しました。
InstagramやTikTokではライフハック系のコンテンツやHow Toが継続して人気な理由は、ここにあったのかもしれませんね。
自分を定義するため
68%の参加者は、特定のコンテンツをシェアすることで、自分の”理想的なオンライン上の人物像”を作ることにつながる。
また、自分自身の価値観などを定義できるからコンテンツをシェアすると回答しました。
理想の自分をソーシャルメディア上で作ることは、ユーザーにとっては当たり前のことなのかもしれません。
例えば、Instagramでは綺麗に見える写真や加工された写真をアップすることがごく一般的です。
これは、自分の理想をそこで(=ソーシャルメディア)で構築できるからです。
この調査結果を踏まえると、ブランドや企業がソーシャルメディアのコンテンツを制作する場合は、
そのコンテンツがオーディエンスの興味関心に沿うものであるかどうかだけでなく、
オーディエンス自身がそのコンテンツを共有することを「誇り」に思うかどうかを戦略的に考えるべきかもしれません。
自己充足感を満たすため
人間は誰でもポジティブなフィードバックを受けたり、自分自身に価値があると常に感じたりしたいものです。
同じ研究によると、”消費者はコンテンツを共有することで、より楽しむことができる。” ということが判明したのでした。
自分自身の制作したコンテンツでなくても、自分がシェアした”面白いコンテンツ”によって周りから反応を得たり、
共感を得られることは、確実に「繋がり」と「満足感」を満たすものでしょう。
自分が”信じる”意見を周りに伝えるため
84%の参加者は、”自分が気になる社会問題やブランドを支援するための手段として情報をシェアする “と回答しました。
もし、あなたのブランドが特定の社会問題や課題に対して取り組んでいる活動があるのならば、ブランドとして、
それらに対する意見を表明することはオーディエンスと繋がりやすいコンテンツになりうるかもしれません。
オーディエンスとの信頼関係を構築する方
私たちは信頼していない人からは何も物を買おうとは思いません。そしてあなたのオーディエンスも全く同じです。
外資系有名広告代理店OgilvyのPR/CEOであるクリス・グレイブス氏は、ウェビナーを開催し、その中でマーケターが顧客の信頼を得るための方法について語りました。
「信頼のホルモン」と呼ばれるオキシトシンは、誰かに存在を受け入れられたり、自分が何かの一員であると感じたときに脳から放出される”快感物質”です。
グレイブス氏は、「人は自分の気分が良くなると、自分の考えや行動を変える可能性が高くなります。
そしてほとんどの場合、人は大きなグループの一員になった時に気分が総じて高揚するのです。」と説明します。
ある電力会社が行った実験によると、隣人の電力をいつ使うか、使わないかといった電力の消費週間を見せられたお客さまは、それを真似したくなるという結果が出たそうです。
そして、それは電力の使用量が多い、少ないにかかわらずでした。
このように、自分の仲間とみなしている人々が特定の行動をとると、多くの人は安心感や帰属感を感じるために、それらを真似したくなるのです。
この調査結果から考えると、UGC(=User Generated Contents)やポジティブ評価のカスタマーレビューは、
他の人たちがすでにあなたのブランドの顧客として満足していることをオーディエンスに示すのに最適な方法なのです。
また、別の調査では
“76%の消費者が、一般の人々がシェアするコンテンツは、ブランドが自らから発信する広告よりも正直で信頼できるものであると感じる “と回答したのでした。
以上の結果からもわかるように、UGCは確実にオーディエンスとの信頼関係の構築に役立つコンテンツ戦略のひとつです。
ぜひ、あなたのブランドのマーケティング戦略でもUGCをブーストできるよう、ストラテジーを立ててみて下さい。
ビジュアルでエンゲージメントを高める方
素敵なコンテンツを制作しても、シェアされなかったり実際にオーディエンスに覚えてもらえなければ、広告やコンテンツは機能を果たしません。
では、しっかりと彼らの記憶に残るにはどうすれば良いのでしょうか?
オーディエンスがコンテンツに興味を持ち、それらを記憶し、学ぶために最も効果的な方法は、視覚的に補助があることが鍵となります。
学習方法の分類で最もよく使われるもののひとつにVAKモデルと呼ばれるものがあるのですが、
これは、人々を「学習を視覚的学習者」「聴覚的学習者」「運動感覚的学習者」に分けるものです。
Current Health Sciences Journalに掲載された研究によると、一般人口の65%が視覚的学習者であるということが確認されています。
目で見て情報を理解するということは、ビデオや写真、イラストなど。
視覚的な要素はあなたの投稿を偶然目にした人々のアテンションを惹きつけ、文字以上の情報を提供することができます。
また、実際に商品を探していたり、検討していたり、比較していたりしている人たちにあなたのブランドや商品をアピールする際にも効果的です。
一見当たり前のようですが、ソーシャルメディアで戦略的にビジュアル要素を計算して入れることプロモーションに欠かせない理由には科学的な根拠があるのです。
色がオーディエンスに与える影響とは
Impact of Color on Marketing(色がマーケティングに与える影響)という研究によると、
人は、人や商品と最初に接してから90秒以内に対象物に対する感情を決め、そしてその評価(=感情)の約62〜90%は色”だけ”で決まる というのです。
あなたのブランドはもうすでに色を持っているはずですが、それらの色をきちんとうまく活用できていますか?
あなたのブランドの色を大きく変えることなく、オーディエンスの感情と結びつけてうまくソーシャルメディアで活用することがマーケティングでは重要となってきます。
例えば、赤色を使うにしてもあなたのブランドカラーに合う赤はライトな赤でしょうか?少しダークな赤でしょうか?
ソーシャルメディアコンテンツの色を戦略的に決定する際には、自社のブランドのトーンとボイスに沿っているかをしっかりと考慮しましょう。
どのようなメッセージを伝えたいのか、そしてそのメッセージを伝えるのに役立つのはどのような色なのか。
色と感情のつながり
ここでは、基本的な色と感情のつながりをご紹介いたします。
黒は高級な雰囲気や洗練された質感を表すのに適しています。また、ネガティブな意味合いでは陰気さや不安を強調することにも使用できます。
赤色は色の中でも一際目立つ色で、情熱や愛情、興奮、怒りを表す色合いです。
オレンジは陽気さや楽しい雰囲気、親しみやすさを表現することができます。
紫色は奈良時代から平安時代では、天皇や朝廷の高官の色として「禁色」とされ、庶民は使用できない色だったため、
現代でも高貴な印象や、少し神秘的な雰囲気を醸し出す時に使用されていますね。
青色はクールな雰囲気、知的さ、冷静さ、そして感情で言うと悲しみなどを表現することができます。
ポジティブな感情がシェアを促進させる?
米国心理学会誌(Psychological Science)によると、”特定の感情”を刺激することで、メッセージはよりシェアされやすくなるそうです。
彼らの研究によると、ストーリーや情報のシェアは、覚醒によって引き起こされることが判明。感情的な刺激などで人が興奮状態になると、
自律神経が活性化され、人間に備わっている社会的な伝達機能が刺激されるそうです。
人々の感情を刺激するコンテンツはどれもオーディエンスに大きな影響を与えることがわかっていますが、
ペンシルバニア大学の研究者により、人はよりポジティブなコンテンツの方がシェアしやすくなるとされることが判明しました。
例えば、少し笑えるようなメッセージやビジュアルであったり、肯定感を与えるメッセージであったり…。そして意外にも、絵文字にも感情を揺さぶる絶大な力があるのです!
Twitterでの絵文字使用を調査した研究では、”顔文字をよく使う人(特にポジティブな顔文字)は、人気者や影響力のある人である傾向がある “ということがわかりました。
明るい絵文字を適度に使用したソーシャルメディアのキャプションコピーを書くことが、オーディエンスのエンゲージメントを高めるためにも必須なのかもしれません。
ハイブリッド型のイベントがニューノーマルに
皆さんは、FOMOという言葉を聞いたことはありますか?
え!ご存知ないですか…?
マーケターだったらこの言葉を知らない人はいませんよ…!
そうです、その感情です。
今、もしあなたがFOMOという言葉に初めて出会ったマーケターさんだとしましょう。
どんな感情になったでしょうか?
「え、マーケターはみんな知ってるの?でも、私は知らない…」
「知っていて当たり前の言葉なの?」
というような少しの不安感を感じたかもしれません。
このように、FOMOとは、英語でfear of missing outの頭文字をとった言葉で、「見逃したり取り残されたりすることへの不安」を表す言葉です。
例えば、みんなが参加しているイベントに自分だけ参加していなかったり、人気のレストランに行っていないことを「自分だけ」行けていないと感じたり…。
これらの感情は情報に溢れているソーシャルメディアを日常的に活用する若い世代で多く見られます。
これらの恐怖心が結果として、SNSを必要以上にこまめにチェックしたり、常に新しい情報を手に入れようとする行動につながるのです。
誰かに「あなただけ、参加していないですよ」というメッセージなどを向けることは、
彼らの不安な感情を煽ることになってしまうので、FOMOを活用することには少し道徳的に疑問が残ります。
しかし、「このキャンペーンは今夜に終了します!お見逃しなく!」といったメッセージや「他では見られない〇〇を公開中!」という言葉はCTAとして効果を発揮するはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はソーシャルメディアマーケティングの戦略立案に使える心理学をご紹介いたしました。
オーディエンスの心理を深く理解することで、効果的かつ説得力のあるマーケティング施策を構築できるだけでなく、オーディエンスとの信頼関係構築にも役立つでしょう。
ぜひ、今回紹介したポイントを活用してソーシャルメディアマーケティングの戦略を構築してみて下さいね!