Doveから学ぶ、デジタルマーケティングを駆使した存在感の示し方

Doveと聞いて思いつくのは?

石鹸かもしれませんし、素敵な広告、キャンペーン施策の数々かもしれません。

1957年にアメリカで発売が開始されたDoveは、日本でも薬局に行くとしっかりと棚に陳列されていますよね。

Doveは発売当初はただの石鹸ブランドとして位置づけられていたのですが、長年にわたるデジタルマーケティングキャンペーンにより、

今では美容業界における強力なゲームチェンジャーとして地位を確立しています。

Doveは石鹸だけでなく、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、乳液などのモイスチャライザー、

デオドラント、フェイシャルスキンケア、セルフタンニング製品、そして男性用美容・スキンケア市場に向けた別ラインなど、年々その製品の幅と種類を拡大してきました。

2021年には、Doveブランドの価値は時価総額約51億ドルとなり、過去15年間に実施された数多くのデジタルキャンペーンが国内外の権威ある賞を受賞しています。

常に革新的で大胆な行動、意志を人々に示すDoveは、「美」を売るだけではなく、

オーディエンスの自尊心や自分を受け入れることの大切さについて、考えてもらうことを目的としています。

美容をテーマにした広告の大半が、その人の欠点を修正したり隠したりすることを目的としていることを考えると、

このコンセプトは真っ向から矛盾しているように思えるかもしれません。

しかし、それがDoveであり、それがDoveの表現する「美しさ」なのです。

今記事では、Doveが実践するデジタルマーケティング施策から、クリエイティブ戦略まで、彼らの革新の起こし方を徹底解説していきます。

Doveのクリエイティブマーケティング戦略とは?

Doveのクリエイティブマーケティング戦略とは?

会話を始めるのはいつもDove

メッセージはオーディエンスの心にいつも、何かが残るように。

一般的に多くの企業は「文化」「人種」「政治」などのセンシティブなトピックを避ける傾向がありますが、Doveは違います。

彼らはそれらのトピックについて、ただ「良い」「悪い」などといった言葉を並べるのではなく、

Doveにしかできない方法で問いかけることで、オーディエンス間での会話をスタートさせるのです。

2004年にDoveは「Real Beauty」というコンセプトを打ち出し、Doveが身を置くカテゴリーで真の革命を起こしたのでした。

現代では「自分らしく」や「飾らない、そのままのあなたが美しい」といったコンセプトや価値観は多くの広告で見かけられますが、

2004年の広告業界では考えられないものでした。

当時はプロのメイクアップアーティストがメイクを施し、完璧な照明とセットによって作り出されたモデルの姿が広告を占拠していました。

そんな時代に、女性のリアルな美しさをコンセプトとして支持したDoveは、確実に他と一線を画していたのでした。

Doveのクリエイティブマーケティング戦略とは?

当時のキャンペーンでは、この広告をアメリカのビルボードに掲載し、オーディエンスに意見を問いかけるスタイルの広告として打ち出されました。

Doveのクリエイティブなコミュニケーションは必然的に目立つだけでなく、オーディエンスの心に「疑問」や「気づき」を与えるため、

彼らのターゲットでない層からも多くの注目を集めたのでした。

Doveの売上はReal Beautyキャンペーンの結果、キャンペーン開始から10年で25億ドルから40億ドルに跳ね上がり、

Doveはアメリカでナンバーワンの人気の石鹸ブランドとなり、ユニリーバ全社でベストセラー商品となりました。

Doveのクリエイティブマーケティング戦略とは?2

気づきを与えてくれるブランドとは?

オーディエンスがその企業のことを好きになる瞬間を作り出す。

その他にも、Doveの代名詞とも言える”Dove Real beauty sketch”

Doveのクリエイティブマーケティング戦略とは?

 リアルビューティー スケッチ | あなたは自分が思うよりもずっと美しい

動画リンク: https://youtu.be/E8-XKIY5gRo

このキャンペーンでDoveは多くの人々が抱く、「自分の美しさ」の概念を覆しました。

このビデオではそれぞれの女性が自分自身の容姿について説明するよう求められ、それに続いて、見知らぬ人が彼女の容姿について説明します。

そして、プロのアーティストが2つの異なる説明に基づいて2つのポートレートを描くのでした。

その結果は非常に興味深いもので、いかに私たち自身が自分を見ているのかが形として現れているのでした。

私たちは社会に生きる中で、常に他者と自分の容姿を比べたり、その結果、自分自身が充分ではないという気持ちになってしまうことが多いのではないでしょうか?

しかし、自分自身は自分が思っている以上に美しく、素敵な存在なのです。そんな温かい感情に気づかせてくれるのが、どこかの企業の広告なら…?

もうそれは、好きにならざるを得ませんよね。

顧客と感情でつながる

顧客と感情でつながる

Doveは、メッセージングのあらゆる段階で、顧客の深いインサイトを鋭く理解しています。

例えば、2015年に実施した「#SpeakBeautiful」キャンペーンでは、Twitter社とコラボしてボディイメージに関するネガティブなツイートに対抗するとともに、

これらのツイートにリアルタイムで対応しました。

このキャンペーンを開始するにあたり、Twitter社とDoveは共同でボディシェイミング(=体、体型を恥じること)についてのビデオ広告を制作し、

2015年のアカデミー賞の前夜祭で放映したのでした。

2015年の1年だけで、女性たちは#SpeakBeautifulのハッシュタグを168,000回以上使用し、

キャンペーンのソーシャルメディアでのインプレッション数はなんと、8億回に達したのでした。

顧客と感情でつながる

It’s time to change the way we talk about beauty.

It can start with you

#SpeakBeautiful and spread self-esteem.

今こそ、美についての考え方を変える時です。

まずは、あなたから始めましょう。

#SpeakBeautifulで自尊心を広めましょう。

2017年の「Real Women」フォトキャンペーンでは、有名なフォトグラファーとコラボして「等身大の女性」の写真を撮影し、

彼女たちの決意、根性、才能を強調したキャンペーンを実施しました。

顧客と感情でつながる2

画像出典:https://www.unilever.com/news/news-and-features/Feature-article/2017/Announcing-the-Dove-Real-Beauty-Pledge.html

このキャンペーンではShutterstock社と連携し、これらの写真に「#beautiful」のタグを付けてコンテンツサイトにアップロードし、

beautifulと検索するとこれらの写真が結果として表示されるようにしました。

さらにDoveは、他のフォトグラファーやブランドにもこの活動への参加を呼びかけ、

「#realbeauty」のメッセージを積極的に支持してくれる人を、周りを巻き込んで大きな動きを作り出したのでした。

Dove流「美しさ」の示し方

Dove流「美しさ」の示し方

Dove流「美しさ」の示し方

画像出典:https://www.springwise.com/innovation/advertising-marketing/dove-self-esteem-campaign

ソーシャルメディアの普及で私たちは当たり前のように「完成された美」を目にするようになりました。

しかし、そこにはひとつ大きな問題があるのです。

大人になると、世の中に「完璧」など存在しないということに気づき、他者と自己をはっきりと認識し始めますが、

まだ「自己」が定まっていない若い世代は見るもの全てを「本物」だと思ってしまうことがあります。

例えば、Instagramに毎分、毎秒フィードに上がってくる可愛い女の子たちの写真はどうでしょう?

ニキビひとつない肌や、細く引き締まったウエストが「本物」の美しさなのだと認識されている世界、それがソーシャルメディアなのです。

では、それらを目にする人々がまだ何も知らない若者だったらどうでしょうか?

「これは加工だから、ニキビのひとつやふたつがあっても普通だよね。」

そこまで理解できている若い子たちはどれだけいるでしょうか?

これは、すごく難しい問題です。しかし、同時にものすごく大切な問題でもあります。

まだ、それらを加工だと気づいていない若い子たちがニキビのある自分の肌と、広告やソーシャルメディアに上がってくる加工された肌を見比べた時、

彼らの自尊心はどうなるでしょうか?

美しさを強調することは「悪」ではありません。しかし、同時に「真実」も写さなければ、そのブランドは顧客に誠実とは言えないでしょう。

そこでDoveは2018年に「No distortion」キャンペーンを実施しました。

Dove流「美しさ」の示し方2

広告やオンラインで使用される女性の体や肌などの画像に加工を加える編集に反発したDoveは、

写真がデジタルで加工されていないことを確認するためのシンボルである「No Digital Distortion」(=加工なし)マークを導入したのでした。

このマークは、Doveが制作するすべてのデジタル広告、プリント広告、ブランド/ソーシャルメディアコンテンツに表示されています。

Doveはただ、一度のキャンペーンが目的でメッセージやコンセプトを打ち出しているのではありません。

これら全ては、彼らの原点である「#Realbeauty」キャンペーンを体現するべくして、継続的に行われているコミットメントのひとつなのです。

Doveを成功に導いた3つの理由

Doveを成功に導いた3つの理由

オーディエンスを熟知すること

Doveは、戦略的かつ理魅力的なデジタル施策を実施する際、適切な方法とタイミングでオーディエンスとつながることに努力を惜しみません。

例えば、2017年には若い女性をターゲットとした施策を実施するため、実際にターゲットオーディエンスが直面している課題、

そして彼ら自身をより深く理解するために「Dove Global Girls Beauty and Confidence Report」を作成しました。

これは、世界中の女の子の自尊心や外見に対するプレッシャー、自信の影響を調査したDove史上最大の学術レポートでした。

このように、ただ施策を実施するために調査を行うのではなく、ターゲットが本当に悩んでいることを理解しようとする姿勢はどのブランドも学ぶべき姿勢かもしれません。

周りを巻き込む

Doveはキャンペーン施策で、常に他の人たちにも参加を呼びかけることで、自分たちのソーシャルメディアチャンネルに沢山のUGCを作成しています。

Twitterで実施された「#SpeakBeautiful」のハッシュタグに影響された女性たちは、わざわざツイッターのアカウントを作り、

ポジティブな気持ちを広めたり、自分の経験に基づく意見を述べるまでに繋がっていたのです。

素敵なキャンペーンには、必ず参加したがる人々が沢山いるはずです。そのような人々と「一緒に」キャンペーンを作り上げていくことは、

デジタル上でのキャンペーンでは欠かせないことです。

インフルエンサーの「らしさ」を最大限に引き出す

Doveはコンテンツを作るには、コンテンツクリエイターと共に働くことがベストであるということを知っています。

DoveのInstagramにアップされる商品プロモーション画像の大半は、インフルエンサーのスナップを再利用したり、リポストしたものです。

また、Doveは、洗練されたインフルエンサーがカメラに向かって商品を掲げるというありきたりなショットではなく、

様々な肌タイプ、体型、文化的背景を持つインフルエンサーと仕事をすることを選択し、彼らがDoveの商品をどのように紹介したいかを尊重しているのです。

私たち人間が1人ひとり、違う考えを持つように、肌にもタイプや質、文化にも好みがあります。

だからこそ、色んなバックグラウンドを持つインフルエンサーと働くことは、同じ商品だとしてもアプローチ方法に幅が出るのです。

言い換えれば、Doveは「達成不可能な美の理想」を、オーディエンスに押し付けるのではなく、「あなたらしい美しさの追求」を後押ししているのです。

このように様々なインフルエンサーやコミュニティを活用することで、Doveはブランドメッセージを「本物」の方法で伝えることができるようになったのでした。

まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか?Doveの素敵な試作の数々から、彼らの成功の理由まで、楽しんでいただけたでしょうか?

ただ一つのブランドになるべくして、Doveはオリジナルのメッセージと姿勢を貫いてきました。

あなたのブランドしか伝えることのできないメッセージはどんなメッセージでしょうか?

ぜひ、今回の記事からDoveの大胆さとスマートさをヒントに、あなたのブランドにしかできないコミュニケーションを探ってみてくださいね。

 

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著者紹介

代表取締役CEO
1985年生まれ。岩手県出身。
SEO/Web広告運用/サイト分析・改善など、Webサイトの運用改善を得意としています。