皆さんはARという言葉を聞いたことがありますか?
テクノロジーの発展に伴い、デジタルを駆使してさまざまな形の広告が誕生しましたが、その中でも「AR」は新たなテクノロジーとして、
クリエイティブの世界ではすでにバズワードとして大きな注目を集めています。
今記事ではそんな、デジタル広告市場の在り方を根本から変えようとしているAR技術について詳しく解説するだけでなく、
AR技術を駆使した広告の成功事例など、ARに関する全てをご紹介いたします。
CONTENTS
AR/VR/MRの違いって?
ARやVRという単語は耳にすることが多くても、実際にそれらが何を意味するかはご存知でしょうか?
まずは用語をきちんと整理してから詳しい中身に踏み込んでいきましょう!
ARとは?
画像出典:https://locatify.com/blog/location-based-augmented-reality-apps-2017-rtls-ar/
「AR」とは、Augmented Reality:拡張現実という意味になります。Augmentedは拡張を意味し、Realityは現実を意味します。
わかりやすい例で言うと、数年前に世界規模でポケモンGoが流行りましたよね?
ポケモンGoで使用されている技術はAR技術なのです。プレイヤーがカメラをかざした時に、そこに映るのは現実世界とデジタルで作られたポケモン達でした。
このように、ARを駆使することで 現実世界とデジタルを融合させ、新しい「世界」を作り出すことができるのです。
VRとは?
画像出典:https://unsplash.com/photos/NN9HQkDgguc
「VR」とは、Virtual Reality:仮想現実という意味になります。Virtualは仮想を意味し、Realityは現実を意味します。
ですので、VRは現実世界とは重ならない、没入型の体験を生み出す技術のことを指します。
例えば、ARと同じくゲームを例にあげると、ARでは現実世界とデジタルが融合してそこに新しい世界が存在していましたよね?
しかし、VRはデジタルの世界にプレイヤーが入り込むといった構図になります。
MRとは?
「MR」とは、Mixed Reality:複合現実という意味になります。Mixedは複合を意味し、Realityは現実を意味します。
ARとMRはその言葉の概念だけで見るとすごく似ているかもしれません。しかし、実際の意味はその逆なのです。
ARは現実世界の中にデバイスなどを使用することで、デジタルで作った物体を現実世界に拡張することができます。なので、メインの世界は現実世界です。
しかし、MRではゴーグルなどを使用して受け取った現実世界の情報を、バーチャルの仮想空間に反映させます。ですので、メインはバーチャルの世界になります。
これで、AR、VR、MRの違いはバッチリですね!では、次にAR技術がマーケティングにどのような効果を生み出すかを詳しく見ていきましょう。
AR技術がマーケティングにもたらす効果とは
AR広告はまだ、ブルーオーシャン?
現代社会には様々なデジタル技術が存在しますが、それらの中でもAR技術(拡張現実)は群を抜いて人々の注目を惹きつけています。
今まで、消費者とコミュニケーションを取るため様々な広告施策が打ち出されてきました。
しかし、そのほとんどは新聞や雑誌などの紙媒体、もしくはラジオ広告、テレビ広告、デジタルバナー広告といったものでした。
The Drumの調査によると、ARは人々の注意を85秒以上惹きつけ、インタラクション率を20%高め、
購入までのクリックスルー率を33%向上させることができるということが判明しているのです。
人間のアテンション・スパンが8秒だとされる現代に、85秒も人々の注意を惹きつけることができる技術があるならば、それを使わない手はないですよね。
その事実に気づいている多くの企業は実際にAR技術を駆使したマーケティング戦略を構築し、様々な施策を実施しています。
そして、現段階では消費者の多くがAR広告に見慣れていないため、どんな内容の広告であろうと勝手に注目してしまうのです。
また、人は見慣れているものには簡単には関心は示しませんが、見たことがない、何か違和感があるものには簡単に興味関心を示します。
ですので、今の段階でより綿密に構築されたストーリーとビジュアルのアイデアをARを用いて表現することができれば、それは確実に消費者の注目を惹きつけるものになるのです。
ARで消費者との繋がりがもっと強くなる
AR技術を用いることが生み出すベネフィットのひとつに、消費者とのエモーショナルな繋がりが生まれることがあげられます。
エモーショナルな繋がりというと少し、抽象的に聞こえるかもしれませんがARを体験するということは企業からの一方的なコミュニケーションではなく、
オーディエンス(=消費者)が主体となって「体験」を楽しむことができるのです。
それは、まるでゲームをプレイしているかのような感覚なのです。そして、ただ流れているものを「見る」だけでなく、
実際に「体験」することでオーディエンスは様々な感情を感じることができるのです。
このように、ARを使った施策ではオーディエンスが興奮を感じたり、驚いたりで彼ら自身の中で様々な感情が生まれることで、それらがブランド認知や購買促進に繋がるのです。
一部引用:https://rubygarage.org/blog/augmented-reality-in-advertising
EコマースにARが欠かせなくなる?
もうひとつのベネフィットは、バーチャルな試着や購入前の検討をじっくりできる機会を顧客に提供することができることです。
近年、パンデミックの影響もあり、EC市場が急成長を遂げています。
しかし、これほどテクノロジーが発展しているのにもかかわらず、未だに私たちは自らがネットで購入したものに
「サイズが違っていた」「思っていた色合いと少し違った」「サイズ感が思っていた以上に大きいな…」
などという形で落胆してしまった経験があるのではないでしょうか?
「実物をもっと近くで、いろんな角度から見れたらな…」
このような想いを可能にするのがAR技術なのです。
消費者は家にいながらにして、メガネ、靴、服、宝石、時計など、さまざまなアイテムをARで試着することができます。
また、追って事例で紹介しますが、家具もAR技術を使うことで実際に自分の部屋に置いたらどのような雰囲気になるか、
サイズは合うのか などを確認できるような施策をIKEAはARを駆使して生み出しています。
このように、ARは、特にEコマースの時代において、販売促進や収益増加のための強力なツールとなるのでした。
ARを活用した事例
ここでは、実際にAR技術を活用し、成功を納めたマーケティング施策をご紹介いたします。
IKEA
画像出典:https://www.architectmagazine.com/technology/ikea-launches-augmented-reality-application
「自分の部屋に新しいソファーを置きたいな…。」
そう思ってネットでソファーを探すも、実際にそのソファーが自分の部屋に置けるサイズなのか、置いたとすれば雰囲気はどうなるのか…
これらの問題を解決したのがIKEAが開発した「IKEA place」でした。
IKEAは家具を実際に自分の部屋に置いてみる”体験”ができるアプリをAR技術を用いて制作したのです。
アプリでは、iPhoneまたはiPadのカメラで自らの部屋をスキャンすることで、空間の中にIKEAの商品を配置することができるのです。
ユーザーは、オンラインデータベースに登録されている2,000点以上のIKEAの商品の中から、好みの製品を選ぶことができ、
選んだ商品をドラッグ&ドロップすることで、デバイスに写る自らの部屋に置くことができます。
このIKEAの試作では、消費者が家具をオンラインで購入する際に感じていた「不満のインサイト」を払拭することを可能にしたのです。
SEPHORA(セフォラ)
オンラインでのお買い物は便利なのですが、それが化粧品になるとどうしても、色味や質感が気になってしまうものです。
少し高めのファンデーションを買ったら、自分の肌の色とすこーし違っていた!なんてことが起こってしまうと、ほんとに消費者としても悲しいですよね。
そのような失敗を避けるために、多くの消費者はオンラインでの化粧品の購入は、既に使っているもしくは過去に店頭で試したことがあるもの のみになってしまいます。
そんな化粧品に関するオンラインショッピングでの悩みを解決したのが、SEPHORAの開発したアプリでした。
SEPHORAは、既存の「Virtual Artist(バーチャルアーティスト)」機能に、ライブ3D顔認識機能を導入しました。
これは、より正確な顔のトラッキングとレンダリングを可能にし、
まるで実際に化粧品を店頭で試しているくらいのクオリティーの”テスティング体験”をユーザーに提供したのでした。
また、このARアプリが非常に効果的で面白いと感じたのは、好きなブランドのフルメイクをバーチャルで試せるだけではないということです。
さらに、自分の顔に合わせたステップバイステップのチュートリアルを受けることができ、気に入ったルックを簡単に再現することができます。
もちろん、必要な商品やツールも配置されているので、すぐに選んで購入することができます。
家にいる時間が増えて、新しい化粧品を試すことができなかった消費者に“試せる機会”を提供することで、
実際に消費者は楽しんで”自分に合う物”を見つけることができるのでした。
そして、これら全てが行われているのはオンラインなので、消費者は自分が気に入った化粧品を見つけると、すぐに購入することができるのです。
“自分に似合う”を見つけた熱が冷めないうちに、消費者を購入フェーズまで持っていけるのもデジタルの強みですからね。
Nike
画像出典:https://www.mediapost.com/publications/article/327197/foot-locker-nike-launch-ar-scavenger-hunt.html
ナイキは、Foot Locker社とのコラボで モバイルアプリにAR機能を搭載し、
ユーザーをロサンゼルスの特定の場所に誘導して「The Hunt」(=宝探し)に参加することで、
限定モデルのスニーカーを手に入れることができる というユーザー参加型イベントを開催したのです。
これらのARイベントやオンラインポップアップショップなどの施策は、
特にスマートフォンを使って商品を見つけたり購入したりすることに慣れている若年層の顧客を取り込むための戦略の一環として行われているそうで、
Nikeが販売したエアジョーダンIII「ティンカー」は、SnapchatのARレンズを使った試作で、たった23分で完売し、その後すぐにアディダスも同様の施策を行ったのでした。
GUCCI
画像出典:https://www.inputmag.com/style/gucci-virtual-sneakers-nft-wanna-fashion-augmented-reality
アパレル業界がARを活用する上で多くの消費者が期待すること、それはリアルな試着体験ではないでしょうか?
特にその商品が高価なものであった場合、試着なしで買うには少々、勇気が必要になってきます。
GUCCIはハイブランドの中でも比較的早い段階でAR技術を駆使したプロモーション施策を打ち出したブランドでした。
そして彼らは実際の商品ではなく、”デジタルでしか履けないスニーカー”の商品を発表したのでした。
その他にもARファッションプラットフォームのWannaとのコラボレーションによるデジタル専用のトレーナーを開発。
これはGUCCIのアプリから17.99ドルで購入することができ、消費者はハイブランドを簡単に、お手頃価格で手に入れられると感じたのでした。
また、ソーシャルメディア上でのバーチャルインフルエンサーやARフィルターの人気の高まりを受けて、
これは「デジタルファッション」の最初の例の一つであり、このコンセプトはすぐに広まるだろうと予測されています。
Wanna社のCEOであるSergey Arkhangelskiy氏は、Business of Fashion誌に対し、”5年後、あるいは10年後には、
ファッションブランドの収益の大きな部分をデジタル製品が占めるようになるだろう “と語っています。
まとめ
いかがだったでしょうか?AR技術はマーケティングをよりインタラクティブな施策にレベルアップするためのスパイスになるだけなく、
消費者にも多くのベネフィットをもたらします。
それは、新しい顧客体験かもしれませんし、彼らが想像していなかった”楽しさ”を感じる体験の創造かもしれません。
今後も、テクノロジーの進化が進むことで、私たちが想像できないことが現実世界で可能になるかもしれませんね。
今後もテクノロジーの進化がマーケティングに与える影響に目が離せません!