ソーシャル・リスニングがマーケティングに欠かせない理由とは?

ソーシャル・リスニングとはTwitterやInstagramなどのソーシャルメディア上にあがる、ユーザーのリアルな声を収集、分析するマーケティング手法のひとつです。

ソーシャルメディアのユーザー数は現在、全世界で42億人を突破しました。

 また日本国内におけるソーシャルメディアの利用者数は7,975万人となり、2022年末には8,241万人まで増えるとされています。

ソーシャル・リスニングは、増え続けるソーシャルメディア上のユーザーボイスをしっかりとキャッチし、

戦略的なマーケティング施策の実施には欠かせない手法なのです。

本記事ではソーシャル・リスニングについての理解を深めるだけでなく、

海外事例からすぐに実践できるソーシャル・リスニングのコツまで、幅広くご紹介いたします。

ソーシャル・リスニングとは?

ソーシャル・リスニングとは?

ソーシャル・リスニングという、言葉だけを見ると

「ソーシャル?それってソーシャルメディアのこと?聞く?何を?」というような印象を持たれるかもしれません。

ここでは、少し視点を変えてまずはソーシャル・リスニングを理解することに注力してみましょう。

あなたはコーヒーショップを経営しているオーナーです。

ある日、あなたがカウンターでカフェラテを作っていると、列に並んでいた2人のお客さんがあなたの店で提供する料理について話しているのを耳にします。

1人はこう言います。

「ここのクロワッサンは絶品だよ!パリパリで、中はしっとりしていて…」

すると、もう1人がこう答えます。

「確かに、ここのクロワッサンは最高だよね。」

オーナーであるあなたが材料からこだわって作っているクロワッサンがお客さんに人気であることを知り、あなたは大満足です。

しかし、思わぬところで次のセリフが聞こえてきました。

「クロワッサンは美味しいんだけど…クッキーはイマイチなんだよね。なんか、パサパサしているというか…。」

「確かに、サイズの割りにちょっと値段も高いよね。」

あなたは不思議に思い始めました。

「お客さんは皆、クッキーについて同じように感じているのかな?」

そう思ったあなたは、馴染みのお客さんや新規のお客さんに意見を聞いてみることにしました。

すると、そこには自分が今まで気づきもしなかった沢山の発見があったのです。

あなたはお客さんの意見を参考に、来る人みんなが喜ぶようにメニューや価格を改善することにしました。

その結果、何が起こるでしょうか?

パサパサで人気がなかったクッキーは、お客さんの声を取り入れ、しっとりクッキーに改良され、サイズと価格も多くのお客さんが納得のいくものに。

これは、お客さんの意見にお店側が耳を傾けたことで改善することが出来たのです。

そこには、お店が1人ひとりのお客さんと向き合い、関わりを持つことで生まれる「信頼関係」が存在しているのでした。

ソーシャル・リスニングはこのお店のオーナーが行ったことをただ、ソーシャルメディアで行うだけなのです。

顧客は何に満足していて、何に不満を抱いているのか?それらを解消するには?

Twitterなどのソーシャルメディアでは、顧客が日頃から製品やブランドに対して抱いているリアルな声がたくさん発見できるはずです。

次に、ソーシャル・リスニングの少し細かな定義と方法についてご紹介します。

ソーシャル・リスニングの定義

ソーシャル・リスニングの定義

ソーシャル・リスニングの定義

ソーシャル・リスニングは2つのステップで構成されています。

ステップ1: ソーシャルメディアチャンネル(Instagram、Twitter、Facebookなど)を細かくチェックし、

自社ブランド、競合他社、製品、市場に関連するキーワードについてユーザーからどのように言及されているかを確認する。

ステップ2: ソーシャルメディアで集めた情報を分析し、学んだことをどうアクションに移すか、方法を検討する。

例えば、ソーシャルメディアで製品やブランドに満足してくれている顧客にコメントを返すような小さなアクションから、

ブランド全体のポジショニングを変えるような大きなアクションまで考えられます。

ソーシャル・リスニングは、一見、ソーシャルメディア・モニタリングと同じように思えるかもしれませんが、

この2つのコンセプトは少し異なるので、それも合わせて確認しておきましょう。

ソーシャル・リスニングとソーシャルメディア・モニタリングの違い

ソーシャルメディア・モニタリングは、以下のような指標を見ることを言います。

 

・ブランド、製品についてのコメント

・関連するハッシュタグ

・競合他社についてのコメント

・業界のトレンド

 

これらを見て、それらのキーワード等に関するデータを収集することをソーシャルメディア・モニタリングと言います。

また、ソーシャルメディア・モニタリングは、ROIモニタリングやA/Bテスト施策などに最適だと考えられています。

収集したデータをもとにアクションを起こしたとき、ソーシャル・リスニングのプロセスが始まります。

ソーシャルメディア・モニタリングがエンゲージメント率やメンション数などの指標を見るのに対し、

ソーシャル・リスニングは数字だけではなく、データの背後にある顧客の感情、ムードを考慮します。

なので、ソーシャル・リスニングは、単にブランドが言及された回数を数えるだけではなく、顧客の感情をキャッチすることを目的とします。

この「オンラインでの雰囲気(ムード)」は、ソーシャルメディア・センチメントとも呼ばれます。

ソーシャルメディア・センチメントを正確に把握することは、ソーシャル・リスニングの重要な要素とも言えるでしょう。

人々があなたのブランドについてどのように感じているかを理解することは、マーケティングや製品開発を正しい軌道に乗せるのに役立つだけでなく、

ポジティブなコメントやネガティブなコメントに正しく、素早く対応することを可能にします。

では、実際にソーシャル・リスニングをうまく活用している企業の事例を見ていきましょう。

ソーシャル・リスニング 海外事例(ナイキ、コカ・コーラ)

ソーシャル・リスニング 海外事例(ナイキ、コカ・コーラ)

ソーシャル・リスニングでは、顧客にブランドとの繋がりを持つ機会を提供することが出来ます。

例えば、顧客があなたのブランドや製品をどれだけ気に入ったかをツイートするかもしれないし、

カスタマーサービスに何か質問をしたくてツイートすることがあるかもしれません。

多くの企業が顧客との会話をせず、一方的に広告を出すコミュニケーションをしている中、ナイキはソーシャル・リスニングをうまく活用しています。

ソーシャル・リスニング 海外事例(ナイキ、コカ・コーラ)1

顧客:こんにちは!私のNike Training Club Pro の割引が使えないんだけど。

メールにあるリンクをクリックしても、正規価格しか表示されないです:)

Nike:心配しなくても大丈夫です、モーガンさん!割引は最終画面で表示されますよ。

また、もし何かあったらこちらにお電話くださいね。4amから11pmまで、毎日対応しております。

もうひとつの素晴らしい例は、コカ・コーラ社です。彼らはフォロワーが自社製品についてツイートすると、

頻繁に返信するなどして顧客とのつながりをソーシャルメディア上で深めています。

ソーシャル・リスニング 海外事例(ナイキ、コカ・コーラ)2

顧客: 本当にこの商品サイコーだと思います! いつも仕事前に2本買うようにしているから、ずっと生産し続けて欲しいなぁ。

Coca-Cola社:あなたのエネルギーが私たちは大好きです! 何かあったら、またDMしてくださいね!

このように、細かく顧客の意見に目を配り対話を重ねることで、顧客エンゲージメントが格段に高まるのです。

実際にあなたのブランドが実践するとするならば、どのようなトーンや語り口調で顧客との対話ができるでしょうか?

ソーシャル・リスニングはリスクマネジメントにつながる?

ソーシャル・リスニングはリスクマネジメントにつながる?

顧客エンゲージメントは彼らの感情がブランドに対してポジティブな時に起こりやすいですが、

もちろんネガティブな感情がソーシャルメディア上に溢れることも想定しなければなりません。

ソーシャル・リスニングでは、顧客の感情をリアルタイムで追跡することができます。

どの投稿がブランドにとって良い影響を与えているのか、そしてどの投稿が悪い影響を与えているのかが一目瞭然なのです。

顧客から多くのポジティブなコメントやエンゲージメントを得ている場合は、何が顧客をそうさせているのか、その理由を探りましょう。

顧客はコメントやツイートでブランドの何が好きで何が嫌いなのか、企業にとって多くの有益な情報を共有しています。

これらの声を上手く反映させることで、企業のソーシャルメディアチャネルを顧客との対話を可能にする場として活用することができるのです。

また、ソーシャル・リスニングは、キャンペーンやPR施策の失敗や炎上を企業側が手に負えなくなる前に最善策で対処するのにも役立ちます。

ソーシャルメディア・センチメント(=顧客の感情、ムード)が下がっている場合は、彼らの声やフィードバックを見直して、将来的に同じような失敗を防ぐ為のヒントを探しましょう。

競合他社は炎上中?

競合他社は炎上中?

また、ソーシャル・リスニングとは、人々が自社ブランドについて何を言っているかを理解するだけではありません。

競合他社についての発言にも、しっかりと目を向けておきましょう。

これにより、自社ブランドが市場でどのようなポジションにあるのかなど、重要な洞察を知ることができます。

その他にも、競合他社が何をしようとしているのかをリアルタイムで知ることができます。

新製品を発売しているのか?新しいマーケティングキャンペーンを展開しているのか?もしくは、マスコミに叩かれているのか…?

ソーシャル・リスニングを恒常的に行うことは、このような新しい機会や脅威の出現をいち早く発見することにつながり、

それに応じた戦略的な計画や素早い対応を可能にするのです。

ソーシャル・リスニングのやり方

ソーシャル・リスニングのやり方

ソーシャル・リスニングのやり方

効果的なソーシャル・リスニングに欠かせないこと。

それは、何のためにリスニングするのかを明確にし、ブランドに適した(関連性のある)キーワードを選ぶことです。

ここでは、ソーシャル・リスニングに欠かせない重要なキーワードやトピックをご紹介いたします。

 

・自社ブランド名とハンドルネーム

・製品名(一般的な誤記を含む)

・競合他社のブランド名、製品名、ハンドルネーム

・業界のバズワード

・自社ブランドのスローガンと競合他社のスローガン

・自社ブランド社および競合他社の重役やキーパーソンの名前(CEO、アンバサダーなど)

・キャンペーン名やPRのキーワード

・自社ブランドのハッシュタグと競合他社のハッシュタグ

・自社ブランドの業界に関連するハッシュタグ

・ありがちなスペルミスや略語

 

これらを細かくモニタリングすることで、顧客がリアルタイムで自社ブランドや製品に関してどのような感情を抱いているのかを確認することができるのです。

ソーシャル・リスニングに関する5つのポイント

ソーシャル・リスニングに関する5つのポイント

次に、ソーシャル・リスニングに使える5つのポイントをご紹介します。

是非、自社ブランドのソーシャル・リスニングを実施される際に活用してみてください。

あらゆる場所に耳を傾ける

顧客が何を言っているかだけではなく、どこであなたのこと(=自社ブランド)について話しているかを知りましょう。

例えば、あなたの企業がアパレルだとしましょう。そうすると、服に関する会話はLinkedinよりも、Instagram上で繰り広げられることの方が多いかもしれません。

逆にクラウドやソフトウェアなどのビジネス向け商品を取り扱う企業ならば、

InstagramよりもTwitterやLinkedInの方がブランドや製品についてのメンション数は多いかもしれません。

また、Twitterでは大きな話題になっているのに、Facebookでは一切、話題になっていないということもあるでしょう。

どこで話題になっているかを知ることは、なぜ、それが話題になっているかを知ることと同じく重要な要素のひとつです。

そうすることで、オーガニックエンゲージメントや有料広告で彼らの会話を刺激したり、その会話を発展させるための効果的な戦略を立てることがでるのです。

競合他社から学ぶ

私たちは、競合他社からは常に何かを学ぶことができます。

特に、人々が彼らに対してどのような印象を抱き、なぜ評価しているのかを知ることは自社ブランドを成長させる上では欠かせないことです。

彼らが正しいことをしているか、人々は彼らのどこを愛しているかを見てみましょう。

そしてそれと同時に、彼らがどこでミスをしているかもしっかりと把握しておくのです。

他のチームとのコラボレーション

ソーシャル・リスニングは、会社全体に役立つ様々な情報を提供してくれます。

カスタマーサービス、コンテンツマーケティング、製品開発の各チームは、

ソーシャルメディアに耳を傾けているときに得た情報から新しいアイデアにつながるヒントを得ることができます。

ソーシャル・リスニングで得た情報はマーケティングチームで留めてしまうのではなく、他の部署やチームと共有し、彼らにも意見を求めましょう。

そうすることで、チームが今まで気づかなかったインサイトの発見に繋がったり、他社が真似できない、オリジナル性に富んだ顧客対応の実現が可能になるかもしれません。

変化に対応する

ソーシャルメディアで情報収集を開始すると、ブランドに関する顧客間の会話や感情がどのようなトーンで行われているかを感じ取れる独自の感覚が身についてきます。

そして人々が自社についてどのように感じているかを恒常的に把握していれば、それがいつ変化するかがわかります。

エンゲージメントやセンチメントの大きな変化は、ブランドに対する全体的な認識が変わったことを意味します。

そして企業はその理由を理解して、戦略を適切に変化させる必要があります。

それは、ポジティブな波に乗ることかもしれませんし、早期に誤った投稿や方向を発見し、チームに軌道修正を促すことにもつながるのです。

さぁ、行動に移そう!

最後に一番大切なこと。

れは、行動を起こさなければ、ソーシャルメディアのモニタリングをしているだけで、ソーシャル・リスニングをしているわけではないということです。

ソーシャル・リスニングは、単にキーワードや指標を追跡するだけではありません。

既存顧客や今後、顧客になりうる人々があなたの企業やブランドに何を求めているのか、どうすれば彼らにそれを提供できるのかを把握、分析することなのです。

なので、個々のコメントだけではなく、長期的なパターンや傾向を分析するようにしましょう。

このように全体的なインサイトを掴むことは、今後のマーケティング戦略を成功に導く上で最も強力な効果を発揮します。

まとめ

まとめ

今記事ではソーシャル・リスニングの基礎から、実施方法、海外での事例などをご紹介しました。

これらの情報を用いて、あなたの企業に合ったソーシャル・リスニングを今日から始めてはいかがでしょうか?

ただ、情報を集めるだけでなく、その背景にある顧客の感情を掴むことをお忘れなく!

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著者紹介

代表取締役CEO
1985年生まれ。岩手県出身。
SEO/Web広告運用/サイト分析・改善など、Webサイトの運用改善を得意としています。